地球温暖化

1. LCAの取り組み

(1) タイヤのLCCO2算定ガイドライン

当会ではタイヤのLCCO2算定の為の基礎データや計算例を示すことを目的にガイドラインを作成しています。

タイヤのLCAガイドラインは1998年に一般社団法人日本ゴム工業会において取り纏められたものが初のガイドラインとなり、以降10年以上にわたって使用されてきましたが、国際規格/基準に充分適合できなくなった状況もあり、2012年に当会において大幅な改訂を行いました(Ver.2.0)。

Ver.2.0発行より約10年が経過したことにより自動車業界を取り巻く状況が変化、実態に即した算定が可能となるガイドラインにすべく改訂を行ったものがVer.3.0です。最新インベントリデータや代表タイヤデータの反映を行うとともに、タイヤのライフサイクルで8割以上のGHG排出量を占める使用段階の算定について、最新の燃費試験の設定条件、結果を反映しています。

また、クリティカルレビューは一般社団法人日本LCA推進機構に依頼し、ISO14040:2006及びISO14044:2006に適合していることの認定を受けています。

「タイヤのLCCO2算定ガイドライン」は 限定公開版と完全公開版の2種類を用意しています。

当会は一般社団法人サステナブル経営推進機構と特殊ライセンス契約を締結し、本ガイドラインにインベントリデータベースIDEAv2の温室効果ガス排出係数を掲載しています。そのため当会は、本ガイドラインに沿った計算を行う希望者を対象に、所定の同意を受けることを条件として、本ガイドラインを開示することができます。ただし、例外的に、インベントリデータベースIDEAv2エンドユーザーライセンスの保有者に対しては、ライセンス保有の確認のみで本ガイドラインを開示します。

IDEAの排出係数が掲載されていない 限定公開版は、ダウンロードして御覧いただけます。

IDEAの排出係数が掲載された完全公開版をお求めの方は、こちらをクリックしお申込みください。

(2) LCA日本フォーラム表彰

当会は「タイヤのLCCO2算定ガイドラインの策定」及び「タイヤラベリング制度の導入」など、業界一体となった温室効果ガス排出量削減活動の推進が評価され、平成25年度第10回LCA日本フォーラム表彰において「LCA日本フォーラム奨励賞」を、令和3年度 第18回LCA日本フォーラム表彰において「LCA日本フォーラム会長賞」を、それぞれ受賞しています。

2. CO2排出量削減効果の算定

(1) 乗用車用タイヤの転がり抵抗低減によるCO2排出量削減効果について

① はじめに

CO2排出量をタイヤのライフサイクル全体(原材料調達、生産、流通、使用、廃棄・リサイクル)で考えると、タイヤ使用時が8割以上を占めます。タイヤの転がり抵抗を低減することで自動車の燃費が向上し、CO2排出量の削減が可能になります。
日本のタイヤ業界は、世界に先駆けて乗用車用タイヤ(市販用の夏用タイヤ)を対象とした「タイヤラベリング制度」の運用を2010年に開始しました。一般ユーザーはタイヤを購入する際、ラベルに表示されたグレードを参考に転がり抵抗の小さい「低燃費タイヤ」(1)を選択することができます。
このラベリング制度の効果もあり、転がり抵抗の小さいタイヤが年々普及してきました。当会はこの転がり抵抗の小さいタイヤの普及によるCO2排出量削減効果を確認するため調査を実施し、2015年、2018年に結果を公表しています。ラベリング制度開始前後の2006年、2012年、2016年のCO2排出量を算定しました。
この調査は以降も製品ライフサイクル等を考慮し4年毎に行うこととしており、この度2020年のCO2排出量を調査し、CO2排出量削減効果をとりまとめました。

(1)
転がり抵抗性能の等級が A 以上でウェットグリップ性能の等級が a~d の範囲内にあるタイヤ
https://www.jatma.or.jp/environment_recycle/aboutlabelingsystem.html 参照)

② タイヤ転がり抵抗係数の低減状況

会員企業が国内で販売したタイヤの転がり抵抗係数の状況を図1に示します。
ラベリング制度のグレーディング(表1)に当てはめて販売本数の構成比を示しています。
「低燃費タイヤ」の転がり抵抗係数に相当する「A」以上のグレードのタイヤは、2006年では全体の29.7%でしたが、2012年は54.7%、2016年は76.9%、2020年は77.8%となり、転がり抵抗が小さいタイヤの販売比率増加が継続しています。なお、「AA」以上のグレードのタイヤは、2006年では全体の3.8%でしたが、2012年は9.7%、2016年は28.5%、2020年は38.3%となっています。
また、表2にタイヤの転がり抵抗係数(RRC)毎の販売本数で重みづけをした加重平均値を示しています。2020年は2016年対比で0.2N/kN(2.4%)、2006年対比では1.56N/kN(15.9%)下がっており、RRCの加重平均値も低減が継続されています。

本調査は乗用車用タイヤ全体の使用時CO2排出量を評価するため、ラベリング制度対象外の新車用及び冬用タイヤも対象にしています。

表1 タイヤの転がり抵抗係数(RRC)とラベリング制度における分類

転がり抵抗係数(RRC)
単位:N/kN
ラベリング制度における分類(参考)
RRC≦6.5 AAA 低燃費タイヤ
6.6≦RRC≦7.7 AA
7.8≦RRC≦9.0 A
9.1≦RRC≦10.5 B
10.6≦RRC≦12.0 C
12.1≦RRC (C 未満)
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表2 RRCの加重平均値(N/kN)

2006年 2012年 2016年 2020年
9.80 9.06 8.44 8.24

③ タイヤ使用時のCO2排出量削減効果

当会の「タイヤのLCCO2算定ガイドライン Ver.3.0」(2)に基づいて、表2の転がり抵抗の数値からタイヤ使用時のタイヤ1本あたりのCO2排出量(3)を算定したところ、2020年は196.6kg/本となり、2016年と比較すると4.8kg(2.4%)、2006年と比較すると37.2kg(15.9%)のCO2排出量削減となりました(図2)。

(2)
(https://www.jatma.or.jp/environment_recycle/globalwarming.html)
今回の調査は過去の年度も含め本ガイドライン(2021年3月改訂)に基づき算定しているため、過去の公表内容と値が異なっています。
(3)
タイヤ寿命あたりの排出量。車両燃費やタイヤ燃費寄与率などの算定条件は市場平均値ではなく、当会の実験に用いた車両の測定値や計算値を使用しています。

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1年間のタイヤ使用時のCO2排出量を正確に把握する事は困難なため、当該1年間に販売したタイヤが廃棄されるまでの間に排出するCO2の総量を代替指標として比較します。これに各年のタイヤ販売本数を掛け合わせ、国内市場におけるCO2排出量を算定します。
今回の2020年の調査結果を2006年と比較すると、転がり抵抗低減の効果として282.5万トンのCO2排出量削減となりました(図3)。
タイヤ1本あたりのCO2排出量は継続して減少していますが、2020年の販売本数はコロナ禍の影響もあり2016年より1,122万本減っているため、国内市場におけるCO2排出量の削減効果は緩やかになっています。

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(2) トラック・バス用リトレッドタイヤ普及による資源使用量とCO2排出量の削減効果について

① はじめに

タイヤ業界では、タイヤのライフサイクル全体で省エネ化の推進及びCO2の排出量削減に取り組んでいます。また、日本自動車タイヤ協会では、これら活動の効果算定に活用してもらうため、2021年3月に「タイヤの LCCO2算定ガイドライン Ver.3.0」を改定発行しています。

当会ではこのガイドラインを用いて、日本国内市場におけるトラック・バス用リトレッドタイヤ(1)の普及に伴う資源使用量の削減効果、及びCO2排出量の削減効果を2022年12月に公表しております。

今回、その後の推移を確認するため、2022年と2023年の新品タイヤとリトレッドタイヤの販売実績を調査しその結果に基づく削減効果を取りまとめました。

前回同様、国内市場における各年度の販売実績データに関しては、更生タイヤ全国協議会よりご提供いただき、削減効果の算定に使用しております。

(1)
走行により摩耗したトレッドゴム(路面と接する部分)を図1のように新しく貼り替えて、タイヤの機能を甦らせて再利用するタイヤであり、更生タイヤとも呼ばれます。
台タイヤを再利用でき、ユーザーのコストメリットに繋がり、省資源にも貢献するものです。

図1 リトレッドタイヤイメージ図

図1 リトレッドタイヤイメージ図

(更生タイヤ全国協議会ウェブサイト:https://www.retread.jp/retread-tire/から引用)

② リトレッドタイヤの普及状況について

日本国内市場におけるリトレッド率を表1、図2に示しております。リトレッド率は2018年から2022年まで18%前後で推移しておりましたが、2023年は20%に到達しました。2023年の新品タイヤ販売が2022年対比で減少する中、リトレッドタイヤの販売本数は増加し、リトレッド率が大きく向上しました。

表1 日本国内市場におけるリトレッド率

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
国内販売本数
(万本)
合計 671.4 665.9 599.4 648.0 679.4 637.9
新品 550.6 545.8 489.4 532.2 556.9 510.6
リトレッド(2) 120.8 120.1 110.1 115.8 122.5 127.3
リトレッド率(%)(3) 18.0 18.0 18.4 17.9 18.0 20.0

(2)
更生タイヤ全国協議会の統計調査データ
(3)
リトレッド率(%) = リトレッドタイヤ本数 ÷ (新品本数 + リトレッドタイヤ本数) x 100

図2 日本国内市場におけるリトレッド率の推移

図2 日本国内市場におけるリトレッド率の推移

③ リトレッドタイヤ普及による資源使用量削減効果の算定

リトレッドタイヤの生産では、台タイヤ部分を再利用するため、新規投入材料はトレッドゴムのみとなり、新品タイヤの生産に比べ、資源使用量で約69%、CO2排出量で約65%をそれぞれ削減することができます(タイヤのLCCO2算定ガイドライン 代表サイズ275/80R22.5で計算)。
2018年から2023年における日本国内市場全体の資源削減量を計算した結果を図3に示しております。
これはすべての販売タイヤが新品であった場合に比べた削減量で、リトレッドタイヤ販売本数に比例します。
2020年、2021年は世界的なCOVID-19流行の影響を強く受け低下しましたが、その後、回復し、2023年は流行以前の資源削減量より増加しました。2023年の資源削減量は年間約4.9万トンで、これは275/80R22.5サイズの新品タイヤの平均的な重量で置き換えると約88万本に相当します。

図3 日本国内市場における資源削減量の推移

図3 日本国内市場における資源削減量の推移

④ リトレッドタイヤの普及によるCO2排出量の削減効果の算定

表2に各年における日本国内市場全体の全ての販売タイヤが新品であった場合と比べたCO2削減量をライフサイクル段階別に示しています。また、図4には各年のCO2削減量推移を示しています。

2023年のリトレッドタイヤ本数はCOVID-19流行以前のレベルを上回った結果、CO2削減量も年間約22.1万トンと増加しました。これは275/80R22.5サイズの新品タイヤ約121万本を生産する際のCO2排出に相当する量です。

表2 日本国内市場におけるCO2削減量の推移

CO2削減量 万トン 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
原材料生産 11.5 11.4 10.5 11.0 11.6 12.1
原材料輸送 0.8 0.8 0.7 0.7 0.8 0.8
タイヤ生産 2.0 2.0 1.8 1.9 2.0 2.1
廃棄・リサイクル 6.7 6.7 6.1 6.5 6.8 7.1
合計 20.9 20.8 19.1 20.1 21.2 22.1

各段階のCO2削減量は次のように計算しています。

原材料生産:
新品タイヤ原材料とリトレッドタイヤ用トレッド原材料を生産する際に排出されるCO2の量を比較
原材料輸送:
新品タイヤとリトレッドタイヤの原材料を輸送する際のCO2排出量を比較
タイヤ生産:
新品タイヤとリトレッドタイヤの生産工程におけるCO2排出量を比較
廃棄・リサイクル:
使用済タイヤ(台タイヤ)が日本国内でリトレッドタイヤに再利用されることによって、中古タイヤとして海外へ輸出される分が減るとのシナリオに基づきCO2排出量を計算

図4 日本国内市場におけるCO2削減量の推移

図4 日本国内市場におけるCO2削減量の推移

また、図5に2023年の総本数を前提とした、リトレッド率とCO2削減量の関係を示しています。

これらは比例関係であり、国内市場でリトレッドタイヤの使用が増えていくことにより、さらにCO2削減や資源量削減への貢献も拡大します。

現在の日本国内のリトレッド率は、海外と比べると低い状況であり(4)、リトレッド率が高まることで持続可能な社会の実現に向けてのさらなる貢献が期待されます。

(4)
更生タイヤ全国協議会ウェブサイト https://www.retread.jp/global-standard//

図5 リトレッド率とCO2削減量の関係

図5 リトレッド率とCO2削減量の関係

3. カーボンニュートラル行動計画への参画

当会正会員4社「㈱ブリヂストン、住友ゴム工業㈱、横浜ゴム㈱、TOYO TIRE㈱」は日本ゴム工業会の一員として経団連カーボンニュートラル行動計画に参画し、製造拠点におけるCO2排出削減に取り組んでいます。

削減目標、目標実績など詳細はこちらをご覧ください。