wbcsd - tip sdg roadmap

2021年5月8日、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の傘下にあるタイヤ産業プロジェクト(TIP)より、SDGs達成に必要な変革を推進するために、「持続可能性を求めて:活動の加速に向けたタイヤ産業SDGロードマップ」を策定したことが公表されましたので、その一部を当会にて仮訳しご紹介いたします。

序文(Foreword)

持続可能な開発目標(SDGs)は、2030年までに世界で最も差し迫った社会的、環境的、経済的課題に取り組むための世界的なアジェンダを示しています。

ビジネスにおけるリーダーシップと行動が、この野心的なアジェンダを実現するための鍵であることは広く認識されているとおりです。この変革を主導する上で積極的な役割を果たし、SDGsを運用上の意思決定の中心に位置付ける企業は、最終的には市場の機会を捉え、リスクを更に管理できることにつながります。

「Business and Sustainable Development CommissionのBetter Business、Better Worldレポート」は、企業がSDGsと連動するための有用な事例を示しています。レポートは、持続可能なビジネスモデルが2030年までに12兆米ドルを超える新しい市場価値を引き出し、最大3億8000万人の雇用を創出する可能性があることを概説しています。さらに、レポートは、2030年に向けてさらにはその先においても業界の変革を推進するセクターパートナーシップの重要な役割を強調しています。

2005年に設立された持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)のタイヤ産業プロジェクト(TIP)は、持続可能性の問題に関するタイヤ産業の主要なグローバルフォーラムです。TIPの使命は、タイヤのライフサイクルを通じて、タイヤが人間の健康や環境に及ぼし得る影響を積極的に特定、調査し、より持続可能な未来に貢献することです。TIPは、世界のタイヤ製造能力の60%以上を占める主要なタイヤメーカーがメンバーであり、このロードマップをセクター全体で活用できる指針として開発しました。

私たちはビジネスリーダーとして、同業他社やその他の利害関係者と協力して、タイヤセクターが今後の持続可能性の課題に対処し、業界が成長し続けることを保証したいと考えています。私たちはリーダーシップを発揮し、創造性を発揮し、知識を共有し、持続可能で回復力のある包括的な未来を実現するための革新的なソリューションを提供したいと考えています。

このロードマップにより、TIPは、SDGsに野心的に貢献するために、セクター全体として取り組むべき実効性のある枠組みを提示しています。ロードマップは、バリューチェーンに沿った意思決定を導き、情報を提供し、サポートし、利害関係者との対話を促進し、同業者やバリューチェーンの下流のステークホルダーに活動を促すことを目的としています。

Sustainability Driven:Introducing the Tire Sector Sustainable Development Goals(SDGs) Roadmap(02:19)

Tire CEOs talk 15 years of the Tire Industry Project and launch of the Tire Sector SDG Roadmap(06:09)

要旨(Executive summary)

17の持続可能な開発目標(SDGs)とそれらを補完する169の期限付きターゲットは、民間企業を含むすべての関係者にとって、世界的に求められていることがビジネスソリューションとして変換されて見えるレンズのようなものです。これにより、創造性と革新性を発揮することでソリューションを実現しようとする企業やセクターは、SDGsが示す持続可能な姿に即したリスク管理、消費者需要の予測、成長市場の獲得、サプライチェーンの強化をより的確に行うことが出来るでしょう。

目的

持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の傘下にあるタイヤ産業プロジェクト(TIP)のメンバー11社は、SDGs達成に必要な変革を推進するために、「持続可能性を求めて:活動の加速に向けたタイヤ産業SDGロードマップ」を策定しました。このロードマップは、タイヤ産業が2030アジェンダにどのように貢献できるかを示す野心的で実効性のある道筋を提示しています。このロードマップの目的は、SDGsに沿って低炭素で回復力があり資源効率の高い経済への移行を進めながら、持続可能性の課題に関する業界共通の対応策を構築するためのヒントになるツールを提供することです。

アプローチ

TIPは、WBCSDの「SDGセクター・ロードマップ・ガイドライン」に記載されている3段階のプロセスに従って、産業共有ビジョンを模索、明確化し、実現しました。SDGsに貢献するためのプロセスとして、メンバー企業が一堂に会し、タイヤ産業のバリューチェーン全体におけるSDGsとの関わり方、セクターが最も大きなインパクトを与えられる分野、そしてSDGsへの貢献を拡大・加速するための主要な行動を特定しました。また開発プロセスを通じて、業界団体、非営利団体、専門家など、世界中のさまざまな関係者の意見を聞きながら開発を進めました。

優先順位の高いSDGs

タイヤ産業は17のすべてのSDGs目標と密接に関連していますが、このロードマップでは、タイヤ産業が2030アジェンダの達成に向けてリードし、影響を与え、行動を加速させる可能性が最も高い分野、つまり、8つのSDGsに焦点を当てています。例えば、SDG8(働きがいも経済成長も)とSDG12(つくる責任つかう責任)は、ロードマップの行動と最も一致しています(図1)。

実効性のある道程

我々は、サプライチェーン、オペレーション、製品・サービスという3つの主要テーマにおいて、プラスの影響を最大化し、マイナスの影響を最小化するための7つの機会を特定しました(表1)。そしてそれぞれの機会に対して、必要な行動を示した実効性のある道筋を策定しました。

2030年への行程

SDGsの達成は、一企業の手に負えるものではありません。TIPのメンバーは、このロードマップの行動を推進する上で、自分たちが果たすべき重要な役割を認識しています。TIPの工程は、ロードマップを核として、2023年までに進捗を測る指標を追加開発し、2026年までに進捗報告書を作成、適切に公開することです。我々は、TIPのメンバー以外も含めたすべての産業のメンバー、そしてお客様、消費者、サプライヤー、政府、学界、NGOがロードマップに関与することを奨励します。またSDGs達成を促進するためのプロジェクトの立ち上げやパートナーシップの強化について、ご質問ご意見がございましたら、TIPまでご連絡いただけますようお願い致します。

図1 : SDGsの影響-我々は 8つのSDGsを優先事項とし、中でもセクターが最も大きな影響を与えられるのはSDGs8と12と考えています。

表1 : 重点事項・行程の特定

テーマ 重点事項
サプライチェーン
1.
働きがいのある仕事の確保や人権の擁護を含む、公正で公平、かつ環境に配慮した天然ゴムのバリューチェーンを実現するための活動を加速、拡大する。
2.
持続可能な調達方法の実行や透明性とトレーサビリティの促進を含む、サプライチェーン全体での環境・社会・ガバナンス(ESG)の責任を確立する。
オペレーション
3.
事業の脱炭素化、排出量の削減、天然資源の持続可能な利用のための道筋をつける。
4.
安全で排他的でない労働環境を保証し、すべての従業員に均等な機会を提供する。
製品とサービス
5.
様々なステークホルダーと協力し、タイヤ摩耗粉塵(TRWP)に関して事実に基づく解決方法を検討する。
6.
ユーザーの行動も大きな影響を与えるという認知度も高めながら、コネクテッド・インテリジェント・タイヤを設計し、革新的なデジタル・ソリューションを提供することで、持続可能なモビリティへの移行を加速する。
7.
製品とサービスやビジネスモデルの設計における革新を推進し、低炭素で循環型のソリューションを強化するとともに、世界中の使用済みタイヤ(ELT)の持続可能な管理を確実なものにする。

 TIPのロードマップ全文をご覧になりたい方は、こちらのPDF(英文)をご覧ください。

Webinar:Sustainability Driven - Tire sector Roadmap aims to accelerate impact on the SDGs  (1:03:21)